◆理事長所信・基本方針


公益社団法人水沢青年会議所 2016年度理事長所信

浅間 光将

【はじめに】

 地域の活性化を目指し活動している青年会議所に入会させていただいたのは、先輩からのお誘いがきっかけでした。青年会議所とはどんな活動をしているのだろうという興味と、こんな自分でも活動できるのかという疑問を抱きつつ、私のJAYCEE人生が始まりました。

入会してから最初は「とりあえず」という気持ちで活動に参加していましたが、当時を振り返ると地域貢献に対しての意識が低かったのだと思います。しかし、様々な活動に参加した事で、生まれ育った地域への恩返しがしたいという意識が芽生え、また、職種の枠を超えた会員との交流を通じて多様な価値観を認識し、共感する事で私の考え方は変わり始めました。特に考え方が変わったきっかけは2011年の東日本大震災発災時に関わった沿岸支援です。当時は沿岸の被災地に全国各地の青年会議所から送られてくる支援物資と、救助活動や瓦礫撤去等のボランティアとして参加される各地青年会議所会員の行動力や組織のスケールの大きさに驚くばかりでした。一人の力には限界があっても、この全国組織として活動している会に参加し、仲間と力を合わせればどんな困難でも打破できると確信したのです。また、これまで拝命した数々の役職経験もそれまでの自分の価値観を変えるきっかけとなり、青年会議所活動を通じて私を育ててくれた奥州地域に対して感謝の心が芽生えました。「明るい豊かな社会を築き上げよう」という志を持つ仲間が集い、地域住民の意識を変革し、地域の活性化を願い求め活動するこの青年会議所から、私は多くの気づきを得ました。

そして活動を通じて得た気づきは、奥州市民の一員であると再認識させるとともに、この地域の更なる活性化を目指して能動的に行動する会員として成長の糧になりました。また、数多くの先輩諸兄が積み重ねてきた歴史や伝統を学ぶことは現在の時間軸に合わせたまちづくりを目指す私の大きな指針となります。そして仲間と共に切磋琢磨しながら活動することで、一人ひとりが個として成長し、個と個の価値観を共有し活動することで青年会議所の発展に繋がると考えます。私は今の時代に何が必要なのかを見極めるとともに率先して行動し、愛する地域の為に青年会議所運動を展開していきます。

 

【スローガン】

「今」を駆け抜けよう!

~燦然と輝く笑顔溢れる未来を目指して~

 

【基本理念】

「今」が未来の結果に影響する事を自覚し

願望だけで終わらないように 高い志を持って

いつかではなく 今すぐ行動を起こそう

複雑かつ多様化した社会において、私たち水沢青年会議所は奥州地域の「明るい豊かな社会」の実現にむけて活動しています。では「明るい豊かな社会」とは、どのような社会を意味するのでしょうか。基本的にはその時代の価値観にもとづくものであり、時代とともに変わりうるものであると考えられます。私が考える「明るい豊かな社会」とはこの奥州地域に住む人々の想いをのせた笑顔溢れるまちだと考えています。市民の方は「豊かな暮らしをしたい」、子供たちに「すくすくと成長して欲しい」等々、一人ひとりの価値観は様々ですが、それらはみな切実なる未来です。しかし、地域・集団・隣人のためにといった地域コミュニティーの稀薄さや義理人情という密な人間関係の意識が薄れた風潮の中で、明るい豊かな社会を築くためには会員一人ひとり覚悟を持ち率先して行動することが必要です。そして能動的な青年会議所活動が人と人をつなげ、人と地域をつなげ、この地域の未来を支える原動力になります。この原動力を軸に私たちは更なる地域活性化へどんな状況でも失敗を恐れずに「今」を駆け抜けます。

 

 

【基本方針】

・誇りと気概を育むまちづくり

・次世代を見据えたひとづくり

・歴史あるインディアン旗野球大会の継承と検証

・個の力を集結した会員拡大

・東北青年フォーラムを見据えた組織の運営

・知識と意識を共有する組織力の向上

・価値ある情報の継続的な発信

 

 

・誇りと気概を育むまちづくり

私たちの住む奥州地域は、西側を奥羽山脈、東側を北上山地で挟まれる北上盆地の南部に位置しています。土地の利用状況を見ると農地の割合が高く、稲作を中心とした複合型農業により、県内屈指の農業地帯となっていて、肥沃な大地からは有名な農産物を生産しています。また、東北中部に位置し交通の利便性の良さを背景に商業集積が進み、工業団地等が整備され、農・工・商のバランスがとれた産業基盤が特徴です。また、この地域は古代東北の中心地として数多くの史跡が残され、三偉人資料館や生家なども残されております。そして全国的に知名度の高い伝統産業や祭典などもあり、あらゆる面からの事業展開が図られているのが現状です。また、2013年8月に岩手県北上山地がILC(国際リニアコライダー)国内候補地に選定されたことにより、国内外から多くの研究者や関連産業に従事する方々が奥州地域に訪れる事が予想されます。他国の文化に触れ、互いの価値観を受け止めあうことは、国際化へ向けたまちづくりへと新たな可能性も広がります。

しかし、このように産業基盤が恵まれ、未来へ希望のある話題を持つ奥州地域でも「人口減少」という社会問題を抱えており、奥州市も日本創成会議より発表された消滅可能性都市のリストに挙げられています。要因としては様々な問題が考えられますが、私たちはまちづくりを牽引する団体として、問題の一つひとつに正面から向き合い、5年後、10年後の未来を見据えて率先して行動する必要があります。私の考える未来とは「奥州地域ならではの文化や産業を誇れる知識と自覚を持ち、この奥州地域に人が集う魅力の溢れるまち」です。まちでの暮らしやすさを求める人を集めるようにインフラ整備等を行うのが行政の役割であるならば、まちへ魅力を求める人が集まるように計画的に運動を展開していく必要があります。そのために今の私たちに必要なことは「奥州地域にはどんな魅力があるか」を追求し、その魅力を追及することによって私たちの住む地域への誇りが生まれます。また、この奥州地域で魅力を発信している方々から学び、時には連携し活動する事により、今まで以上にまちづくりへの気概が生まれ、その気概を持って活力のある事業を展開していきます。

 

 

・次世代を見据えたひとづくり

 現在のまちづくりを担っているのが私たち青年であるならば、未来のまちづくりを担うのは次世代の子供たちです。「まちづくりはひとづくり」とあるように、子供たちの健全な成長は私たちの希望であり、未来のまちづくりを担う子供たちを導くのが私たちの責務です。

 私が考える健全な成長とは心身の成長だけではなく、学校生活だけでは得られない体験を基に住んでいる地域へ興味関心を持ち、郷土愛を深められるような成長が必要と感じます。昔は先輩や後輩と外で遊び、子供たち同士や大人達との地域交流が当たり前のように存在していましたが、最近は外で遊ぶ子供たちを見かける機会が減っているように感じます。子供たち同士、または地域との触れ合う機会が少なくなっている今だからこそ、様々な体験を通じて人と人のつながりや地域とのつながりに触れ合うことにより、この地域への郷土愛が育まれます。そして育まれた郷土愛は次世代を託すまちづくりの礎となり、この奥州地域の未来の大きな力になると確信して事業を展開します。

 

 

・歴史あるインディアン旗野球大会の継承と検証

 59回目の開催を迎えるインディアン旗野球大会は青少年の健全な育成と地域交流の活性化を目的に開催されてきました。この59年もの間には参加していただいた地域の方々の想いや、運営を続けてこられた諸先輩方の想いが凝縮されている事業と感じます。私自身も小学校時代に参加し、当時は野球というスポーツを通じて礼儀や先輩、後輩との上下関係といった人のつながり、地域への感謝の心など様々なことを学んだ思い出深い大会です。

 現在この大会を取り巻く環境を鑑みると、少子化により参加チーム数も減少しております。スポーツの多様化が進む現在では野球人口の減少も顕著になっており、単独の行政区単位では参加が叶わないという場合もあります。そこで会としてもう一度この大会を開催する目的を再確認し、行政区の枠を超えたコミュニティーの再構築や、子供たちが公園などで野球というスポーツを気軽に遊べない現状を踏まえ、地域のコミュニティー活性化に繋がる大会にするにはどうしたらよいのか考え、時代に合わせた運営方法を再構築する必要があります。そして60回記念大会へと繋げる為にあらゆる角度から検証しながら事業を展開していきます。

 

 

・個の力を集結した会員拡大

 私たち水沢青年会議所会員も人口とともに年々減少しております。最大時は100名を超えていた会員数も半分以下となり、このまま減少の一途を辿ると明るい豊かな社会の実現に向けて私たちの活動が困難な状況になると考えます。また、より多くの会員が在籍することにより、様々な価値観を持った仲間と同じ目的へ一丸となって活動する事で個々の感性を磨きあげるとともに、事業に対してもより高い効果を挙げられると考えます。そして地域の活性化を目指してより多くの事業が展開できます。その為には会員拡大に向けて奥州地域の発展へ共に行動してくれる方々へ定期的な発信の場を提供します。また、ここ数年は積極的な会員拡大に努めていますが、会員を「集める」ではなく、会員が「集まる」ためにはどうしたら良いかを考える必要があります。私たちには脈々と受け継がれてきた水沢青年会議所の歴史と伝統、そしてその精神を受け継ぎ、次世代へと教え伝えていく使命があります。その使命をしっかりと自覚しつつ「明るい豊かな社会の実現」の為に、全ての会員一人ひとりが地域のリーダーとして志を掲げ、貪欲に自己成長を望みましょう。そしてこの青年会議所に会員が自発的に「集まる」ように、会員一人ひとりが常にビジョンを掲げJAYCEEとしての理念を追求しましょう。会員が水沢青年会議所運動を理解し、自信を持って発信する事が積極的な会員拡大へと繋がります。

 

 

・東北青年フォーラムを見据えた組織の運営

 東北地区協議会の運動を発信する最大の場である2017年度の東北青年フォーラムを奥州市で水沢青年会議所が主管します。この奥州地域で東北青年フォーラムを開催することは先輩方が紡いできた地域活性化の想いを繋げ、またこの地域の魅力を発信する重要な場であり、その為には東北地区協議会及び岩手ブロック協議会と連携し、一年をかけて綿密に設営の準備をしていきます。また、今年度の開催が予定されている東北青年フォーラムinとめでは全員登録をすることにより、会員一人ひとりが運営側として参画する一員として意識を共有し、大会の成功を願い活動していきます。そして2017年の奥州市で開催する東北青年フォーラムに向けて奥州市や他の各種団体と連携し、奥州地域ならではの魅力を集約し発信することは、フォーラム開催後のこの地域にとっても更なる地域の活性化に繋がります。そして奥州地域の発展から岩手、そして全東北を活性化する運動を展開します。また、私たちは東北76LOM、約3000名の仲間をお迎えするにあたり、東北をひとつにという志を持って人と人をつなげ、地域と地域をつなげ、東北の明るい未来を切り拓いていきます。

 

 

・知識と意識を共有する組織力の向上

 笑顔溢れる未来を目指して活動する私たち水沢青年会議所は継続的な成長が求められ、組織力の向上には会員一人ひとりの自立した行動が必要となります。自立した行動とは「他からの支配や助力を受けずに」行動することであり、水沢青年会議所のルーツである歴史を学び、JAYCEEとしての意識を醸成することから始まります。その為に知識と意識を共有するセミナーを開催し、組織力の向上に努めます。

また、公益社団法人格へ移行してから今年で5年が経過します。毎年組織が変わるこの青年会議所においては、公益社団法人格という会の運営方法の確立は永遠のテーマと考えられ、会員一人ひとりが当事者意識を持ち、法律やルールを理解する必要があります。その為には会の運営に携わる理事メンバーへ各種セミナーを開催し、委員会を通じて会員に落とし込み、秩序ある運営の在り方を目指します。

 

 

・価値ある情報の継続的な発信

 私たちが取り組んでいる事業を市民の方に知っていただく為に広報誌「築く」を用いて継続的な発信を心掛けます。紙面として発刊する「築く」は活動内容を知っていただく広報誌だけではなく、過去の情報を得る事ができる資料としても活用します。またホームページやSNS(ソーシャルネットワークサービス)等を活用して情報提供に努める事は、リアルタイムな情報発信と更新の頻度を増やす事により、より最新情報の提供ができます。そして多くの方々へ私たちの熱い想いや事業を認知、共感して頂く事は共に活動する仲間を一人でも多く増やす機会になり、会員拡大の一助と考えます。より正確に、価値ある情報を推敲し、それぞれ広報としての発信力を高め、水沢青年会議所の更なる周知に励みます。

 

 

【おわりに】

 今日という1日は過去になり、明日という1日が今日になる。過去から現在、そして未来へと時間が流れる中で、私たちはいつも現在を歩き続けています。今、私たちが求めている「明るい豊かな社会」とは、時間軸において未来を示し、その未来は現在が続いていった先にあります。例えば10年後の奥州地域を考えたまちづくりにおいて、ビジョンは未来を示し、それに向けて活動するのが現在となります。何もしなくても未来はいつか訪れますが、「誰のために」「何のために」と活動する対象と目的を明確化にする事により、未来はより一層と輝きを増し、「どのように」達成するかを計画し実行する、その過程を経て我々は成長するのです。そして私たちの成長がこの奥州地域活性化への一助となると確信しています。会員一人ひとりが2016年度における立場の中で一年間の役割を全うし、燦然と輝く笑顔溢れる未来を目指して「今」を駆け抜ましょう。